日本には、美しい四季がありますが、秋の醍醐味といえば何といっても 山や森を彩る
紅葉といえるでしょう。
しかし、一体なぜ秋になると、木々の葉はあのような美しい赤や黄色やオレンジ色に変化し、私達の心を和ませてくれるのでしょうか?
そしてまた、葉が色を変化させる事により 樹木にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
それでは みなさん、今回は私と一緒に樹木の世界に足を踏み入れ、木々達がどのようなメカニズムで葉の色を変えて行くのか探ってみる事にしましょう。
季節は秋となり気温が下がり始めました。
一般に
紅葉は、1日の最低気温が8度以下の日が続くと色づき始め、さらに5度以下になると一気に進むといわれています。
今、私達のそばにある木も気温が下がり、葉から水分が蒸散せず、根から水分を吸収する力が衰えはじめました。
このままでは、通常通りに葉から水分を発散すると樹木は枯れてしまいます。
おや、葉と茎の付 け根の部分に何かが起こり始めました。
ここは、枯れ葉として葉を落とす切り離しポイントで「離層」と呼ばれる組織なのですが、この組織がコルク状に変化し、水を葉に流れ難くしはじめました。
葉の中では、「光合成」により 糖分やデンプンの製造がされていますが、こうなるとそれらが茎や枝、幹に流れなくなり、どんどん葉の中に蓄積されてしまいます。
蓄積された糖分は酵素の働きによって、赤や黄色になる色素になっていきます。
また、葉の緑色を形成している物質である「クロロフィル」が、紫外線やアミノ酸などにより分解され、緑色の色素が減少し、赤や黄色の色素が目立つようになります。
これが 葉が緑色から赤や黄色へと変化し、
紅葉するわけなのです。
さて、みなさん紅葉する樹木ですが、これも種類によって、葉が赤くなるもの、黄色くなるもの、褐色になるものが決まっています。
厳密にいうと、赤色に変わるものを「紅葉」(こうよう)、黄色に変わるものを「黄葉」(おうよう)、褐色に変わるものを「褐葉」(かつよう)と呼びます。
しかし、時期が同じなためか、これらすべてを総称して、私達は「
紅葉」と呼んでいます。
紅葉は樹木だけではなく、草や低木の葉にもおこります。
そういったものを「草紅葉」といいます。
ところでみなさん、こうした
紅葉や草紅葉の色の違いは、なぜ起こるのでしょうか?
ここまで、私達は樹木の葉の中で、酵素の働きによって糖分が色素に変化する様をみてきました。
実は、このとき、変化した色素の量によって
紅葉する色の違いが生じるのです。
赤く
紅葉する葉が作る色素は、アントシアンです。
この色素はポリフェノールの一種で、赤、ピンク、紫、青、黒系色素として、植物の葉、花、茎、果実に含まれるものです。
黄色く
紅葉する葉が作る色素は、カロチノイドで、これはファイトケミカルの一種です。
ニンジン、アプリコット、カボチャ類にみられるように、オレンジ色、ピンクあるいは赤色など派手な色彩の植物に多く含まれています。
カロチノイド色素は植物だけではなく、動物にもごく少数ですが、この色素を含むものがいます。
鮭やイクラ、エビやカニの甲羅などの赤い色の色素がこれにあたります。
褐色に
紅葉する葉が作る色素はフロバフェンで、これは、葉中のカテキン類が変化して出来る色素で、タンニンと複雑に酸化重合した褐色物質の総称です。
この他にも紫や茶褐色などの例外もありますが、いずれも色素の違いにより葉の色が決定される訳です。
たんぽぽ博士
色の違いのはなしは、ここまでとして、次は葉が
紅葉することで、いったい木々にとってどのようなメリットがあるのかという事についてお答えしましょう。
結論から答えると、植物にとって
紅葉するメリットはありません。
その説明について、人間の傷の上にかぶさっているカサブタを例にとって説明する人もいます。
つまり人の体の一部ではあるけど生きてはいない。
逆に植物が、人間のカサブタの色を見て、あれは血液中の成分であるヘモグロビンが固まった色だが、あんな色になって人間にどういったメリットがあるのですか?とたずねているのと同じ事で、結果的に色付いただけのものなのです。
ただ、落葉することにメリットはあるですか?と尋ねられれば、メリットはあるのです。
光合成に不利な冬の間に葉を交換するのは、植物にとり、もっとも効率がいいと言えます。
落葉樹は葉を落とすために、葉と枝の間に壁を作る訳ですが、簡単にいえば、その副作用により葉は
紅葉しているだけなのです。
私達人類は、そうして彩られた森林や山々を見て、色彩が美しいと感動している訳です。
ですが、みなさん、こうした
紅葉は地域によって若干、色あいが異なります。
同じ場所でも、毎年、美しい年もあれば、美しくない年もあります。
なぜでしょうか?
紅葉の美しくなる条件とは、一体何なのでしょうか?
紅葉が美しくなる為には、気温、日光、水の3つのポイントが重要になるといわれています。
なかでも気温がもっとも 影響力を持ち、「秋の冷え込みが急」で、「昼と夜の気温の差が大きい」程、
紅葉は綺麗になります。
この温度差が
紅葉のメカニズムを促進させ、ムラ無く一斉に変色させ、葉の色合いをよくする事になるのです。
北国の
紅葉が、美しいといわれるのもこの為なのですが、その他にも「夏が暑く日照時間が長い」「夏に充分な雨が降る」「湿気が少なく乾燥している」などの条件があげられます。
全国の
紅葉の名所にはこの条件をよく満たす山岳地帯が多いといわれています。