ブルース・リーの使っていた武術の名は ジークンド―というものだ
日本では 截拳道(せっけんどう)とも呼ばれている
これは ブルース・リー 本人が作った武道なのであるが
その武道が 一般的な中国拳法(カンフー)と どう違うのか? と聞かれれば、まず、
近代的なフットワークを使う点
基本的なパンチなどは腰からスタートするのではなく 構えた位置からノーモーションで繰り出す
電光石火のスピード 直線で最短距離を打ち抜く(もちろんフックやアッパーなどもあるが…)
型をもたない点 (一般にカンフーには流派ごとに 型がある)
型を用いて パターンで戦う機械的ファイターではなく 何故? 如何にして… を常に考え 試し 頭脳を用いて戦う頭脳的ファイターを目指す点
フェイントやトラップなどを巧みに用いる点
など… 数え上げればキリがないほどの 改革が施されている
ブルース・リー は元々 南派中国拳法 の 詠春拳(えいしゅんけん)という武術を習得していたが、その後、世界の様々な武道や 格闘技の長所を取り入れ ジークンド―を作った
ただし、それは 総合格闘技なのか? というと そうではない
なんでもいいから 自分の特技を生かして 自由に戦う 総合格闘技とは違い ジークンド―という スタイルの武道が 確かに存在するのである
元々、ブルース・リーが習得した 詠春拳は 蹴り技・キック が少ない武術である(詠春拳は へそから上は蹴らない といわれている程だ)
中国は南船北馬 といわれ 北部では 歩いたり 馬に乗って走らせるために馬の腹を蹴ったりで 北派では、蹴り技が多く
南部地方は 川が多く、船の上で しっかり踏ん張って身体を安定させる必要があるので 腕や拳を使って戦う技が多いといわれている
詠春拳は 南派中国拳法に該当し、蹴り技が少ない
ブルース・リーが映画の中で見せている蹴りは フランスの格闘技 サバット や 韓国の テコンドー、タイの ムエタイ…他…から 取り入れた蹴り技(主にサバット)だと言われている
しかし、映画の中で ブルース・リーが用いているアクション と 彼の本当の武道とでは若干異なる部分もある
スタンスや 動きのコンパクトさ(地味さ?w)などである
さて話を元にもどすが 本書 『ストレートリード』では 文字通り その ジークンド―の基本ともいえる ストレートリード… ボクシングでいうところの ジャブに当たるパンチの技術を紹介している
ジャブとは 構えた時、前にある方の手で ストレートを撃つパンチで 威嚇、相手との距離を測る、または 距離をとる 細かく素早く 数多く放ち 試合を有利に支配するための ボクシングでは 最も重要なパンチだと言われている
「左(ジャブ)を制する者は 世界を制する」と言われる程なのだが 通常、ボクシングでは、右利きの人の場合 左手を前に構える
なので、必然的に 右利きの人は 左ストレートがジャブになる
この点について ブルース・リーは 考えに考えたが 右利きの人は 右構え… すなわち 利き手の右手を前に構えるスタイルをとった
一般的に 中国や日本の武道では、右利きの人は右手を前にして構える
ジークンド―のストレートリードは スピードが早くて 威力も強烈である
このパンチは、フェンシング と ボクシングから その利点を取り入れて作られたという
なかでも ボクシング選手の ジム・ドゥリスコル や ジャック・デンプシーから受けた影響が大きく このことが ストレートリードにおいて ひじょうに重要な要素になる
その詳しい内容については、本書を読んでいただければわかるのだが…
ここで この記事を書いている私には ひとつの疑問がある
実は この本の著者 テッド・ウォン氏は、ブルース・リーは詠春拳を棄てた!
この ストレートリードは フェンシングと ドゥリスコル 、デンプシーなどのボクシング技術から作られたもの… みたいなことを書いているのだが、 日本人の ジークンド―の先生が やはり (ボクシングやフェンシングだけでなく) ジークンド―の ベースは 詠春拳である… というふうに
ふたつの 異なるように聞こえる見解があるのだ
そんな事は この本に書かれたことを 必死になって やってみれば解る事なのだが…
(実行する人にだけ解る…
やってみると これって 実は 難しいよね…(笑) ってことw)
私たちの世代は 子供のころに ブルース・リーが好きになり 10代くらいで ジークンド―の本などを手に入れ その高度な内容に驚き、当時は 大いに感動したものだ
これは別の書物からの抜粋だが…
そして、彼の死後、何十年も経った現在でも 武道について だんだん わかり始めると、また さらに ぶっ飛んだ驚きと 感銘を受け続けている
凄い…… だんだん凄さが わかってくるw
天才だった とは高校の頃から知ってはいたが ホント凄い!
よく人から 「ブルース・リーが 生きていたら 今頃 どうなっていたんだろう?」 って聞かれるのだが
私が思うに たぶん ルーゲ―リック病(天才病)にでも なったんじゃないだろうか? と思えるほどである
これほどの マーシャル・アーツ(芸術) を 後世の私たちに残してくれた ブルース・リーに この齢になって 改めて 感謝と尊敬を込めて ありがとう と伝えたい
この闘技は 凄い まさに 文化遺産だ